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小説・ゲーム・バンド、その他なんでも面白いもの、紹介していきます!

多重人格の最も怖い使い方-十三番目の人格ISOLA

著者:貴志祐介

出版:角川ホラー文庫

頁数:401頁

 

相変わらずこの著者は知識の幅が広すぎる。研究しているのだとしたらどこまで深く研究しているのでしょうか。人の心理を煽る方法を熟知しすぎている。

 

こんな人にオススメ

・心理学や精神病などに興味がある方

・先の見えないホラーが好きな方

・勧善懲悪が好きじゃない方

 

あらすじ

「賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格「ISOLA」の出現に、彼女は身も凍る思いがした。」

 

エンパスという能力を持ち、他人の強い感情を読み取ってしまう眉目秀麗な女性、由香里。

阪神大震災が起き持ち前のその能力を活かしながら被災者のケアをしていた彼女はとても麗しい少女と出会う。その少女千尋は俗にいう多重人格だった。驚くべきことにその人格の数も10以上。その人格たちを統合しようとする由香里の前に立ちはだかる数々の無理難題たち、、、。

 

多重人格・エンパス・幽体離脱、と盛りだくさんです。

 

ホラーです。現実的な要素もあり、ファンタジーな面もあり、エンタメ性に富んだホラー小説です。

この小説、何が面白い・・凄いかというと精神分析の詳細な例が登場する点です。

実例を交えて話を展開していくことにより、単なるオカルト的なホラーにリアリティを持たせることに成功しています。

 

ちなみにエンパスとは、他人のエネルギーに影響を受けやすく、他人の感情を直感的に感じて自分の者のように受け入れることのできる天賦の才、みたいです。

一説によると日本人の5人に一人がエンパスらしいですが、果たしてそんなことあるのでしょうか。笑

ただ単にとても共感力が強くすぐ感情移入してしまう人もエンパスと呼べるのかもしれませんね。

そう考えるとこの作品への没入もしやすくなるかもしれません。

 

サイコホラーとしての科学的不可思議性をもちつつ、オカルトホラーとしての怖さを十分に楽しめる作品です。

 

ちなみにこの作品が、貴志祐介のデビュー作です。

交錯し続ける人生-ラッシュライフ

著者:伊坂幸太郎

出版:新潮文庫

頁数:469頁

 

遂に読みましたラッシュライフ。読まず嫌いをしていた伊坂幸太郎

同僚にゴリもゴリ押しされ手を出しました。

 

 読了の感想としてはなんとうまく作りこめられている作品か、、、!ってとこでした。

ふんだんに盛り込まれた伏線たちとミスリードへ導く記述。

これが伊坂か。

信者のように嵌ってしまう気持ちがわかりました。

 

こんな人にオススメ

・パズルが好きな方

・テレビを観るときにすぐにチャンネルを変えてしまう方

・論述系の数学の問題が好きな方

 

あらすじ

「泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。」

 

自分の仕事に圧倒的プロ意識を持つ泥棒、黒崎。

父を自殺で亡くし現人神に憧れる青年、河原崎

プロのサッカー選手と不倫関係になり再婚を目論む女、京子。

リストラに遭い職も家庭も失った中年男、豊田。

 

この4人の一人称視点で物語がめぐっていきます。

 

まったく別々の行動が収束していく様は圧巻です。

 

知己に富んだ会話や、宗教的に魅せられてしまった人、愛憎入り混じるやり取り、犬から何かを感じ取り徐々に信念を取り戻していく様子など、様々な要素が登場してきます。

 

 読みながら「あれ、これ黒崎じゃないか?」とか「あれこの記述さっき見た気がする」など、気づきがあるたびに面白味が増す、そんな小説です。

 

読まず嫌いはダメですね。

伊坂幸太郎、面白いです。

 

是非↓から購入してみてください。

 

 

青臭い主人公モドキ-密閉教室

 

著者:法月綸太郎

出版:講談社

頁数:362頁

 

こんな人にオススメ

・サクサクと進む軽快なミステリーが読みたい方

・高校生のころを思い出したい方

・高校生のころ自分を世界の主人公だと思っていた方

 

あらすじ

舞台は湖山北高校。早朝登校した女子生徒梶川笙子と担任教師大神龍彦が自分たちの教室で発見したのは、クラスメイト中町圭介の死体だった。ガムテープの目張りで閉ざされていた扉の向こうには、彼の死体以外、なぜかあるはずの四十八組の机と椅子が消えうせていた。残されていた遺書はゼロックス・コピー。

果敢にもこの謎だらけの事件に挑むのは、主人公である工藤順也。ハードボイルドやミステリが大好物なだけあり、気取ってみたりするもののそこは一介の高校生に過ぎずどうにも青臭さが否めない。

机と椅子の消失から始まり、矢継ぎ早に表れる謎に立ち向かう主人公とその友人たち。周到に張り巡らされた伏線。たった1日の三重四重の逆転劇。

 

 

高校生が活躍するミステリー小説!

というともうすでに読んでいる方には怒られる、そんな小説です。

 

主人公が謎を看破!→新たな要素が浮上→犯人を追いつめる→新要素浮上→真犯人は、、、!

 

みたいなことの応酬がただひたすらに続きます。

ただ単純にそれが繰り返されるだけではなく趣向を凝らした謎がそこかしこに登場することに加え、平易な文体で綴られているため、主人公に共感することができれば移入することは難くありません。

 

本作の魅力は登場人物みなが、少し浮世離れしたような、一歩引いた場所から物事を眺めるような人たちだという点です。

なのでサッカー部でした、バリバリやってました、みたいな人は感情移入できないかもしれません。

 

また何より、結末。

「あぁ~こういうトリックか!」

「主人公こんな立場なにか!」

というその2つの気持ちに支配されること請け合いです。

 

読みきって初めてなぜ私が、こんな人にオススメにこう書いたのかわかります。

”高校生のころ自分を世界の主人公だと思っていた方”

 

好みが分かれるかもしれませんが、読み進めやすさは抜群です。

読むものないなーって思ったらこの本を選んでみてもよいのでは。

 

 

溜めに溜めて最後の2行-イニシエーション・ラブ

著者:乾くるみ

出版:文春文庫

頁数:272頁

 

「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する」と注意書きがあり、「読み終わった後は必ずもう一度読み返したくなる」

この帯、見たことある人多いんじゃないでしょうか!?

 

こんな方にオススメ

・リアルな人間の怖さを見たい方

・謎が解けた時の快感を味わいたい方

・作家の作ったミスリーディングを看破してみたい方

 

今回から上記なカタチでどんな人向けか書いていこうと思います。

利便性(?)向上です!

 

過去のブログも同じようにアップデートしていくかもしれません。

 

 そんなこんなであらすじです。

あらすじ

side-A

「僕」こと鈴木はしぶしぶ行った合コンで出会ったマユに心を惹かれるも、奥手な性格が災いし言葉を交わす程度で終了。その後同じメンバーで誘われた海水浴にてマユと再会し、なんとか連絡先を入手。

慣れないことも多く初々しいデートを重ねていくも、愛を確かめ合う二人が描かれていく。

side-B

マユとの関係を優先し東京の企業からもらった内定を蹴り地元静岡の企業へ就職した鈴木。新入社員から成績優秀者が選ばれエリートコースに乗せるという会社方針のため断りきれず、マユとの遠距離恋愛を決断。

マユとの愛を支えに毎週静岡に帰るという生活をしていた鈴木は経済的負担+肉体的精神的疲労が重なり目に見えて疲弊していく。

そんななか東京での同僚である石丸美弥子と仕事を通じ意気投合。一方、3週間ぶりに会ったマユから妊娠を告げられる。

ここかた怒涛のように話が展開していくーーーー。

 

 

↑のあらすじのみをみるとただの恋愛小説なのですが、推理小説の面も多分に含まれています。

それがどういうことなのかは読んで確かめてほしいです。

 

 

本書は、くりぃむしちゅー有田哲平UVERworldTAKUYA∞ふかわりょう茅原実里などが帯にコメントを寄せていたりと芸能人の間でとても人気を博しています。

 

私が今までに紹介した本の中では大分とっつきやすい小説ではないかなと思っています。

 

まずは手に取ってもらえるとうれしいですね!

 

 

促された純愛-恋する寄生虫

著者:三秋 縋

出版:KADOKAWAメディアワークス文庫

頁数:322頁

 

エログロどんでん返し系じゃない本も読みますよ。

というアピールをするための記事です。

 

 まずはあらすじから。

あらすじ

「何から何までまともではなくて、しかし、紛れもなくそれは恋だった。

「ねえ、高坂さんは、こんな風に考えたことはない? 自分はこのまま、誰と愛し合うこともなく死んでいくんじゃないか。自分が死んだとき、涙を流してくれる人間は一人もいないんじゃないか」

失業中の青年・高坂賢吾と不登校の少女・佐薙ひじり。一見何もかもが噛み合わない二人は、社会復帰に向けてリハビリを共に行う中で惹かれ合い、やがて恋に落ちる。
しかし、幸福な日々はそう長くは続かなかった。彼らは知らずにいた。二人の恋が、<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎないことを――。」

 

極度の潔癖症が災いし失業中の青年、高坂賢吾。他人が不潔の象徴のように感じられてしまい、部屋から出られない。やむなく出かける際には薄手のビニール手袋をし、マスクで完全防備を余儀なくされる。人と触れ合うことも、誰かが使ったものも使えない状態に陥っていた。

 

部屋から出られない彼は密かに犯罪行為であるマルウェアを作成しネット上でばらまいていた。それを突き止めた和泉という男から半ば脅迫のように子供の面倒を見てくれ、と依頼を受ける。

 

そうして高坂が出会ったのは、佐薙ひじりという17歳の女子高生。

金髪に青いピアス、大きなヘッドホンを身に着けた無愛想な女の子。

自分の聖域を荒らす女子高生に辟易しながらも脅迫の元、潔癖症を隠しながら面倒を見る高坂。ある日、佐薙から連絡を受け迎えに行くとどうやら様子がおかしい。

彼女は「視線恐怖症」であった。

奇抜な髪形や大きなヘッドホンは他人からの視線をそらすために身にしていたものだった。

高坂も潔癖症を告白し、2人の間には特別な感情が芽生え始めていた。

 

 

 

と、まぁ、序盤を短くまとめますとこんな感じになります。

ありがちな恋愛小説じゃないか。そう思われるんじゃないかな、と思いながらそう思われるように書きました。

 

この本が尋常ならざる様相を呈してくるのはここからなのです。

 

その要素をここに書いてしまっては元も子もないので、好きな台詞を置いておきます。

 

「紛いものの恋で何が悪いの?私は操り糸の存在を知った上で、それにあえて身を任せているんだよ。これが自分の意志でなくてなんだっていうの?」

 

紛いものの恋。この言葉が表すところとは。

 

いつも自分の意志にのっとって行動している、と言い切れる人はどれくらいいるでしょうか。

その自己決定は何かから誘導させて行ったものではないのか。

そんな疑心暗鬼にもさせられる儚く美しい恋愛小説です。

 

 

サイコの思想とは-殺戮にいたる病

著者:安孫子武丸

出版:講談社

頁数:324頁

 

名作中の名作サイコ・ホラー小説。

 

あらすじ

「永遠の愛をつかみたいと男は願った―。
東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。
犯人の名前は、蒲生稔!
くり返される凌辱の果ての惨殺。
冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。」

 

衝撃のラストシーン、、、このブログの読んでいると見飽きてきそうな言葉になりつつありますね。

 

いやしかし安孫子武丸、この人は凄いですね、、、

本書では、何度もミスリード・伏線が出てきます。

これを初見で看破するのはとてもじゃないけど無理な話かと思います。

 ちなみに私は3度ほど読み返しても、それでもまだ新しい伏線に気付くことがありました。

 

本書の内容

犯人の蒲生稔が逮捕される、いうなればエピローグから始まり、そこまでにストーリーを3人の人物の視点から描いています。

 

1人目:蒲生 稔

猟奇的な殺人に手を染めていく犯人です。思想的性的に歪んでおり、主人公なのにあまり感情移入できません、、、

逆にそれが読了感をよく見せているかもしれません。

女性を騙しホテルに連れ込み殺害、そのうえで性行為に及ぶという、、なんとも凄惨なキャラです。

 

2人目:蒲生 雅子

ニュースで見た殺人事件の報道から、自分の息子が犯人なのではないかと疑っている母親です。この女性がなんともいい味を出してくれます。このキャラの発言・考え・行動のおかげで伏線がバツバツ機能します。

 

3人目:樋口 武雄

知り合いが稔の殺人に巻き込まれた元警部です。かつての部下が樋口の元を訪れ事件を紐解いていきます。このキャラはストーリーをうまく回していくために配置されたように感じますね。

 

 3人の心理が複雑に絡み合い想像もつかないようなラストへ向けて進んでいきます。

 

猟奇的な殺人シーンは描写も上手く、目を覆いたくなるような残酷なシーンではありますが、一気に読ませてしまう筆力があります。

トリック自体は大きいものの一本勝負ってな感じです。

 

ただ張り巡らされた伏線の上手さ。この小説の魅力はそこに詰まっております。

 

エログロ耐性があるかた、是非に、読んでみてください。

 

一言で戦争は起こせる-虐殺器官

著者:伊藤計劃

出版:早川書房

頁数:432頁

 

夭折の作家、伊藤計劃のデビュー作『虐殺器官』。2007年に出版されました。

「ベストSF2007」国内篇第1位・「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位で、2010年にハヤカワ文庫から文庫版が刊行されました。

 

フジテレビ「ノイタミナムービー」の第2弾「Project Itoh」として劇場映画化もされたため、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

 

あらすじ

サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争・テロが激化した結果、アメリカを始めとする先進諸国は厳格な個人情報管理体制を構築しテロの脅威に対抗していた。十数年後、先進諸国からテロの脅威が除かれた一方、後進国では内戦と民族対立により虐殺が横行するようになっていた。事態を重く見たアメリカは新たに情報軍を創設し、各国の情報収集と戦争犯罪人の暗殺を行うようになった。

アメリカ情報軍に所属するクラヴィス・シェパード大尉は、後進国で虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポールの暗殺を命令され、相棒のウィリアムズら特殊検索群i分遣隊と共にジョン・ポールの目撃情報のあるチェコプラハに潜入する。プラハに潜入したクラヴィスは、ジョン・ポールと交際関係にあったルツィア・シュクロウプの監視を行うが、次第に彼女に好意を抱くようになる。

ある日、クラヴィスはルツィアにクラブに誘われ、そこで政府の情報管理から外れた生活を送るルーシャスたちと出会った。その帰路で、クラヴィスはジョン・ポールに協力するルーシャスら「計数されざる者」に襲撃され拘束されてしまう。拘束されたクラヴィスはジョン・ポールと対面し、彼から「人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる“虐殺文法”が存在する」と聞かされる。ルツィアを監視していたことを暴露されたクラヴィスは、ルーシャスに殺されそうになるが、ウィリアムズら特殊検索群i分遣隊の奇襲によって救出されるも、ジョン・ポールとルツィアは行方不明になってしまう。

 

 

小難しいどころか、文学的な側面すらある文体が並びます。

本としても分厚いため、最初は踏み込みづらいかもしれません。

そのため最初にアニメ劇場版から入ってもよいかと思います。

 

作者 伊藤計劃について

虐殺器官』でデビューしてからわずか2年ほどで肺癌により逝去。

後継作の『ハーモニー』や『屍者の帝國』も虐殺器官のように映画化されました。

題材やその緻密な文体により作品数は少ないもののファンを獲得しています。

 

伊藤計劃の作品の良さは絶対なまでのリアリティ。また、傾倒している文学を底の底まで取り入れきっている点。

お蔭で本をこれから読みたいなーくらいの人にはハードルが高いのも事実ではありますが。

 

そんな方はせっかくなので、アニメからご覧ください。