青春って泥臭い-青空のルーレット
今回は小説の紹介です。
今回は短めにサクっといきます。
『青空のルーレット』
著者:辻内智貴
出版:光文社
皆さんご存知でしょうか。
2007年には塩谷瞬主演で映画化されました。
その原作は、単行本は2001年に、文庫版は光文社文庫から2004年に出版されました。
著者は辻内智樹貴です。
私は中学生の時にこの本に出会いました。
書店で平積みにされている中で、この表紙に目を奪われ即刻レジに向かったことを今でも鮮明に覚えています。
いわゆる小説の「ジャケ買い」ですね。
抜けるような青空。
なんと素晴らしい写真なのでしょうか。
「青い空に浮かんで、俺達はビルの窓を拭くーーーメシを喰うために、家賃を払うために。
けれど俺達はそれぞれやりたいことを別に持っている。音楽、芝居、写真、マンガ……。
だから、俺達が窓を拭いているのは、夢を見続けるためなのだ!
熱く純なハートを持つ男達の夢と友情を感動的に描いた表題作。
ほかに、第十六回太宰治賞受賞作『多輝子ちゃん』を収録する。」
良くも悪くも、このあらすじにすべてが込められている、読了後私はそう感じました。
本作の魅力は想起しやすい描写にあります。
平易な文体に小気味良く進んでいくテンポ。
今読むと、驚くほどさらっと読み切れてしまいます。
難しくないからこそ、本の中に引き込まれていきます。
青空の下、ビルのてっぺんから釣り下がり、窓を拭いている人たちを見たことがあるかと思います。
その男達に焦点を当て、作者が描きたかったものは、「生きる」とは「夢をみる」ことなんだということ。
淡々と日常は過ぎていくが、上手く流れていくことができない人たちもいる。
もがきながら夢を追っている。
リアルな現実を温かな登場人物たち泥臭く彩っている、そんな作品です。
まるで映画を見ているような、上手い盛り上がりの作り方。
特にクライマックスシーンは情景が浮かんでくると思います。
また、強く推したいのが、あとがきまでしっかり読むことです。
読めばまた一段、本書を好きになると思いますよ。
それでは最後に。
本当にいい作品です。