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緻密な世界設計の折-新世界より

新世界より

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2008年の日本SF大賞を受賞した作品です。

 

本作のあらすじは以下の通り。

 

「ここは病的に美しい日本(ユートピア)

子供たちは思考の自由を奪われ、家畜の様に管理されていた。

 

手を触れず、意のままにものを動かせる夢のような力。その力があまりにも強力だったため、人間はある枷を嵌められた。社会を統べる装置として。

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子供たちの歓声が響く。

周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子供たちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。」

 

ホラー作家として有名な貴志祐介が書いた、1,000頁を超える超大作SF小説です。

アニメ化やコミカライズもされているので、目にしたことある人もある程度いるんじゃないかなーと思います。

 

アニメ…

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マンガ…

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やけにこう…かわいいというか萌え絵に仕上がっています。

やはりこういう絵柄の方が売れるのでしょう笑

 

貴志祐介について

『悪の経典』が最も有名なのではないでしょうか。

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映画化もされ、その凄惨なストーリから一世を風靡したホラー小説です。

他にも、『青の炎』や『クリムゾンの迷宮』『天使の囀り』などホラー小説ファンなら一度必ず通るのがこの著者ではないかと思います。

 彼の特徴は圧倒的な描写の緻密さにあると考えています。

文字が映像として頭に流れ込んでくる感覚。

一度、貴志祐介による描写を読んでしまうともう虜になってしまいます。

特に倒叙の作品。(犯人の視点で話が進んでいくもの)

あまりの緊張感に、手に汗握るとはこのことか!と思わされます。

 

・本作について

そんな、「ホラーといえば!」という作家が生み出したSF小説

その内実は民俗学からSF、ホラー、ファンタジー、ミステリー、等あらゆるジャンルの要素を混ぜ込んだものになっています。

 文庫版では上・中・下の3冊にわたる中で、序盤は牧歌的な風景描写・世界観の叙述から始まります。

その後、少年少女たちの冒険活劇へ。集団心理の怖さ・人種差別、またサイコパスの危険性についてなど様々な展開が待っています。

新世界より」の名の通り、世界観が緻密に設計されており、そこを魅力に感じる方が多いようですね。

冒頭は少年たちの生活などのふれ合いが続くため、冗長に感じる人も少ないと言われますが、私はそんなことないと思っています。

それは貴志祐介の叙述の上手さと、世界観の説明の仕方にあります。

少年少女たちへの授業として、「呪力」がなんたるものか、また世界の成り立ちなどが説明されます。

まぁありがちではあるんですが、そのシーンが間延びしそうなタイミングで展開を変えてくる。

 

「昨日までいた少年がいなくなった。それも主人公以外気づいていない。」

 

これこそが本作品の命題です。

危険の芽をために集団がみな目を伏せること、はたしてそれは正しいことなのでしょうか?

また、過去の過ちを二度と引き起こさないことを重要視するあまりに人間性が欠落していくことは容認されていいのか?

新世界より」に内包されている主張は多様です。

それこそ読んだ人によって捉え方が変わるでしょう。

 

是非、皆様も一度読み、どう訴えられかけるか、体感してみてはいかがでしょうか。