愛憎とは-ラバーソウル
著者:井上夢人
出版:講談社
頁数:678頁
今まで1,000は優に超える量の書籍を読んできましたが、最も心に残った小説がこの『ラバーソウル』です。
重い・暗い・どんでん返し。
三拍子そろってます。ネタバレにならない程度に紹介していきます。
あらすじはこちら。
「洋楽専門誌にビートルズの評論を書くことだけが、社会との繋がりだった鈴木誠。女性など無縁だった男が、美しいモデルに心を奪われた。
偶然の積み重なりは、鈴木の車の助手席に、美縞絵里(みしま・えり)を座らせる。
大胆不敵、超細密。
ビートルズの名曲とともに紡がれる、切なく衝撃の物語。
空前の純愛小説が、幕を開ける――。」
醜悪な顔面を持ってしまった主人公、鈴木誠。直視できないほどの容姿のため、女声はおろか誰とも関わりが持てず、音楽雑誌に寄稿をし続ける暮らしを送っている。
人より秀でていることと言ったら、ビートルズに圧倒的に造詣が深いことくらい。
そんな彼がある日であってしまったモデルに心を奪われてしまう。
そこから始まるストーカー行為。
圧倒的筆圧で描かれるその描写が生々しく、陰鬱な気持ちにさせられます。
読めば読むほど主人公の独りよがりで歪な思考に嫌気がさしてくるかと思います。
ですが、そう思った時点でもう筆者の思うつぼにはまっています。
side-A・said-Bと視点が切り替わりながら進んでいきますが、同じシーンを別が視点で進んでいくことになるため、冗長に感じる面もあります。
ここが本書の欠点と言えるのではないでしょうか。
また、わかる方にはわかると思いますが、本書はビートルズの曲名に乗せて話が進んでいきます。
なので、詳しい方はその面でも楽しめるのではないでしょうか。
暗く重たく、陰鬱な文章が続いていき、一体どんな結末で締めてくれるのか、先が気になってしまい本を持つ手がどんどんとページをめくっていく、そんな体験ができること請け合いです。
好きすぎてあまり内容を語れないのがつらいですが、今回はこんなところで。